東邦大学は、東日本大震災の津波が海岸林にもたらした生態学的な影響を発表した。2011年3月11日に起こった巨大津波により、仙台湾沿岸の海岸林の植生は大規模な撹乱を受けた。この災害からの復興に向け、仙台湾湾岸部では2m以上の盛土をし、新たにクロマツを植林する事業が進められている。同学理学部の西廣淳准教授らは、津波による撹乱を受けた海岸林の管理方針の検討に資することを目的に、2013年7月及び10月に津波の影響を受けた海岸林で植生調査を実施。その結果、津波は海岸林の植物の多様性を壊滅させておらず、「津波によって生み出された多様性」があることが明らかとなった。津波による倒木林では草原の植物が、残存林では撹乱以前と共通した樹林の植物が生育していた。さらに、主に海岸林を構成していたクロマツが津波により倒れたことで生じた窪地は、絶滅危惧種であるイヌセンブリやタコノアシの生育場所となっていた。この研究結果は、盛土による植林事業は、生物多様性保全の観点からは問題が大きいことを示しているという。