海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、熱水活動に依存する生物群集(熱水噴出孔生物群集)が生息域の変動によって受ける影響および深海熱水生態系が形成される変遷過程の初期段階を世界で初めて明らかにしたと発表した。熱水噴出孔生物群集の盛衰は熱水噴出域の変動により決まるが、その過程を記録した事例は、これまで海底火山の変動に伴う群集回復の観察結果だけに限られていた。今回の調査研究は、2010年9月に地球深部探査船「ちきゅう」で科学掘削した沖縄トラフの水深1,060mの熱水活動域において、掘削前から掘削40ヶ月後にかけて深海底の生態系モニタリングを実施したもの。人工熱水噴出孔の周辺域において、熱水が湧出するにつれて海底環境が変化し、その後に移入してきた新たな生物種が定着して群集を形成する変遷の過程を定量的に観測・評価した。今後、海底資源開発と環境保全のバランスをとるために必要となる、生態系の安定性と復元力についての知識、及び環境変化に対する生物群集の挙動をモニタリングする手法の確立につながると期待されるという。