(独)海洋研究開発機構(JAMSTEC)、山口大学及び高知大学は、東北地方太平洋沖地震と津波による下北沖底層生態系への影響についての報告を発表した。これは、フランス、オランダ、フィンランドの研究者らと共同で、東北地方太平洋沖地震から5か月後の2011年8月末、中程度の津波におそわれた下北半島沖(下北沖)の堆積構造や化学環境、底生生物群集の分布を震災後初めて調査したもの。調査の結果、下北沖の海底では津波による激しい潮の流れや擾乱(ごちゃまぜ状態)が沖合の生態系に複雑な影響を及ぼしており、またその影響は海底地形や生物の種類によってそれぞれ異なり、必ずしも一様でなかったことが明らかになった。これは下北沖において地震・津波が海底へ及ぼした影響をまとめた最初の報告であり、津波が海底に残した痕跡が残っているうちに海底の様子をとらえた貴重な研究例という。研究チームでは、今後経過観察を行っていくことにより、長期的な視点から地震・津波が海洋生態系に及ぼす影響を明らかにしていく予定という。