滋賀医科大学、九州大学および北陸先端科学技術大学院大学の研究グループは、モデル動物「C.エレガンス(以下「線虫」)」の「群れ形成」に関する研究成果を発表した。この線虫は、ヒトと類似した遺伝子を含む同程度の遺伝子数(約2万個)を有し、体が透明で蛍光観察が可能であるため半世紀近く前から分子遺伝学的な解析等に用いられている。同研究グループは線虫が体長1 mm弱であることに着目し、大量飼育によるコンパクトな群れ形成解析システムの構築や、理論的研究で用いられてきた数理モデルの適用を試みた。その結果、1)餌源や給餌方法を工夫することで大量飼育が可能となり、2)群れ形成の再現を通じて集団がネットワーク状に群れることを発見した。また、3)湿度や線虫密度を変化させるなどの実験、従来の分子遺伝学的な変異体解析、光で標的タンパク質を制御する「オプトジェネティクス」という手法を用いて、線虫が衝突後に移動方向をそろえ、弧を描くように運動することで群れ形成が進むことを解明した。線虫の群れ形成は、人・鳥・魚と共通する基本メカニズムであることが示唆されたという。