東京農工大学、国立環境研究所および森林総合研究所の研究グループは、登山客やハイカーによる外来植物の侵入状況を定量化し、テレビ番組によって培われた自然保全意識と実際の行動が結びついていないことを明らかにした。自然地域を訪れる者の衣類や靴を介して、外来植物のタネが意図せず持ち込まれることがある。国立公園では、外来種の除去作業や靴底から泥やタネなどを除去するための環境整備を進められている。同研究グループは、中部山岳国立公園・立山駅構内において訪問者の靴に付着した土の試料を採取するとともに、外来生物に対する問題意識の程度などを測定するアンケート調査を実施した(N=344)。その結果、約7.8%の訪問者の靴に発芽可能な外来植物のタネが付着していることが判明した。また、外来生物の侵入がもたらす影響に関する認知度や問題認識は高いものの、具体的な行動(靴の清掃)の実施率は極めて低いことが分かった(3.8%)。さらに統計分析を行った結果、こうしたギャップが外来植物の侵入を抑止・軽減する対策の「障壁」となっていることが示唆された。山歩きに出発する前の清掃の励行を呼びかけている。登山靴・トレッキングシューズといった靴底が複雑な形状をしている靴については、より丁寧な清掃が求められるという。