国際農林水産業研究センター(国際農研)と国際コムギ・トウモロコシ改良センターは、BNI強化コムギのLCAモデルを構築し、ライフサイクル全体のGHG削減効果を明らかにした。国際農研等は、野生コムギ近縁種の生物的硝化抑制(BNI: Biological Nitrification Inhibition)に着目し、窒素汚染や地球温暖化等、農業からの環境負荷の軽減と食料増産の両立というコンセプトを具現化した「BNI強化コムギ」を開発している。一方、研究開発成果の社会実装に当たっては、技術の環境貢献度を科学的な予測に基づいて評価し、研究課題の優先順位を決定する「Ex-anteインパクト評価」の重要性が増している。今回、国際農研等は、世界各国で活用されているIPCCガイドラインの算定式にBNIによる「硝化抑制率」を盛り込む補正を行い、コムギ生産の資材及び機械の製造から作物収穫までの各段階で発生するGHG排出量をライフサイクル全体で評価するモデルを構築した。開発目標を考慮したシナリオを設定し、さまざまな指標値を試算した結果、土壌の硝化抑制率40%のBNI強化コムギ(2050年想定)は窒素利用効率を16.7%向上させ、施肥窒素量を15.0%削減できることが明らかになった。また、BNIが発揮されやすい農地(世界のコムギ生産地域の3割相当)に導入した場合、窒素肥料由来のGHGを9.5%削減できるという結果が導出された。今回構築したモデルにより、硝化抑制率30%のBNI強化コムギ(2030年想定)の導入効果も確認されている。現在開発中のBNI強化作物(ソルガム、トウモロコシ等)の事前評価にも応用することができるという。
情報源 |
(国研)国際農林水産業研究センター プレスリリース
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機関 | (国研)国際農林水産業研究センター |
分野 |
地球環境 |
キーワード | LCA | GHG | 生物的硝化抑制 | IPCCガイドライン | BNI強化コムギ | 低環境負荷 | Ex-anteインパクト評価 | 硝化抑制率 | 事前評価 | BNI強化作物 |
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