北海道大学、東京大学および海洋研究開発機構の共同研究チームは、南極氷床の崩壊・後退が止まることはなく、数百年にわたって海水準(SLE: Sea-Level Equivalent)が上昇し続ける可能性があると指摘した。地球温暖化に伴うSLE上昇が懸念されているが、現在採用されている代表濃度経路シナリオ(RCP: Representative Concentration Pathways)の幅のなかでの予測結果はばらついており、21世紀末の全体像は「不確実」なままとなっている。同研究チームは、「氷床モデル国際比較相互プロジェクト(ISMIP6)」に参画し、IPCC第6次評価報告書に西暦2100年までの氷床変動計算に関する成果を提供している。今回、21世紀後期の気候が西暦3000年まで持続するという仮定のもと、先行研究に使用した気候予測データと降雨量などを考慮できる氷床モデル(SICOPOLIS)を援用して、悲観的なシナリオ(RCP8.5/SSP5-8.5)と楽観的なシナリオ(RCP2.6/SSP1-2.6)における複数の数値実験を行った。その結果、氷の損失に伴う2100~3000年までSLE変化を再現することに成功し、悲観的なシナリオではSLEがアンサンブル平均で3.5~5.3 m上昇し、楽観的なシナリオでは0.25 mの上昇に留まることが明らかになった。これらの知見から、21世紀の気候変動が及ぼす南極氷床への影響は,22世紀以降もとどまらないということ,SLEが数m規模で上昇するのは21世紀以降だということが示唆された。今後、異なる氷床モデルを使った研究結果との比較などを行い、的確な不確実性評価を経て、地球上の氷床損失をより完全な姿で提示する、と展望を述べている。
情報源 |
北海道大学 プレスリリース(研究発表)
東京大学大気海洋研究所 プレスリリース (国研)海洋研究開発機構 プレスリリース |
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機関 | 北海道大学 東京大学大気海洋研究所 (国研)海洋研究開発機構 |
分野 |
地球環境 |
キーワード | 南極氷床 | 不確実性 | RCP | 海水準 | Sea-Level Equivalent | 氷床変動計算 | 氷床モデル国際比較相互プロジェクト | ISMIP6 | SICOPOLIS | 氷床損失 |
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