国立環境研究所、東京大学および筑波大学などの研究チームは、世界で初めて、温暖化予測の不確実性をもたらす要因と考えられている「雲の変化に伴う気候要因の変化(雲フィードバック)」の影響を低減することに成功した。温暖化に伴う気温などの予測は全球気候モデル(GCM)を用いた数値シミュレーションによって行われており、水平方向100 km・鉛直方向10 m-1 km程度の空間スケールで計算・表現されている。一方、実際の対流圏では雲や放射などが気候におよぼす影響が少なくないことから、小さな気象現象をパラメータ化して推定する必要がある。同研究チームは、熱帯域における雲の組織化に着目し、地表面で温められた空気が上昇して大気と混合する過程(対流プロセス)と雲フィードバックの関係を解明するために、世界各国のGCM実験データと実観測データを解析した。その結果、対流プロセスを過大評価しているモデルが見受けられ、結果として雲の減少による温暖化の加速効果を過小に見積もっていたことが分かった。また、今回の調査では、雲フィードバックの確からしい値も推定されている。地球温暖化予測を正確に行うためには、雲・対流プロセスの理解を深め、モデルの高度化を推進していく必要があるという。