海洋研究開発機構(JAMSTEC)と東京大学の研究グループは、熱帯域の対流圏上部に広がる雲(以下「熱帯上層雲」)の内部で起きている現象を再現し、熱帯上層雲の寿命や気候変動影響メカニズムを解明した。熱帯上層雲は地球から宇宙への赤外放射を妨げ、温暖化を促進する最大の要因と見られている。一方、さまざまな仮定に基づく計算実験では詳細を明らかにすることができなかったため、温暖化予測の不確実性をもたらす要因のひとつでもあった。同研究グループは、これまでは注目されてこなかった「マイクロスケールの雲粒子成長プロセス」に着目し、「地球シミュレータ」をはじめとする最新のスーパーコンピューターを用いた全球雲解像モデルによる直接計算・シミュレーションを実施した。その結果、熱帯上層雲のライフサイクルには重力沈降過程、雲粒子間の衝突併合過程、雲粒子と水蒸気の昇華過程という3つのステージが存在することが明らかになった。また、温暖化時には対流圏の深さが増すことに伴って、熱帯上層雲の存在する高度の気圧が下がり、それにより雲粒子のプロセスが促進され、対流圏上層の雲量を減少させる働きがあることが分かった。熱帯上層雲の変化については雲粒子スケールの現象以外の現象も影響することから、包括的な調査を続け、気候変動予測の精度・確度向上につなげていくという。