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 虫の鳴き声は多様であるほどリラックス効果をもたらす 日本工営と国環研など

発表日:2022.06.17


  日本工営(株)、東邦大学、千葉工業大学および国立環境研究所の研究チームは、虫の鳴き声が人の心理におよぼす影響を斬新なコンセプトで評価した。緑地の健康改善機能が広く知られるようになり、景観(視覚情報)を重視した建築・デザインが発達してきた。他方、かつて音風景(サウンドスケープ)と称された「自然音(聴覚情報)」も人の心身に好影響を与える要素と考えられている。しかし、景観が人にどう影響するかを検証する研究が数多く行われてきたものの、自然音の効果発現メカニズムに関する理解は深まっていなかった。同研究チームは、日本には古来より虫の鳴き声を楽しむ文化があることから、「身近な虫の鳴き声が人の心理に好影響を及ぼす」という仮説を立て、心理学における測定法の一つであるセマンティック・ディファレンシャル法(SD法)等を用いた検証を試みた。先ずは、千葉県北西部に位置する「白井市」でバッタ目(直翅目)の仲間4種(エンマコオロギ、カンタン、キンヒバリ、スズムシ)を選び、それらの鳴き声を収録する作業に取り組んだ。次いで、それらの音源を単体または組み合わせたサンプル(全15通り)を用意し、実験室で大学生65名にランダムで7通りずつ聞かせ、それぞれの全体的な印象・被験者の好み等を回答させた。得られた回答データに基づく因子分析では、種数が多いサンプルほど「好み」の得点が向上することが分かった。また、抽出・区分された4つの因子(Calm:穏やかさ、Gorgeous:華やかさ、Musicality:音楽性、Deep:深み)のうち、GorgeousとMusicalityの得点が顕著に増加することが明らかになった。さらに音響物理解析を行った結果、複数の種の鳴き声が調和することで、リズムも多様化し、より好ましい印象を与えたと考えられた。自然環境や鳴く虫が多様な緑地の重要性を示唆する結果であり、公園や緑地造成などのグリーンインフラの整備における知見の活用が期待できるという。

情報源 国立環境研究所 報道発表資料
東邦大学 プレスリリース
機関 日本工営(株) 東邦大学 千葉工業大学 国立環境研究所
分野 自然環境
キーワード 緑地 | グリーンインフラ | 虫の鳴き声 | 聴覚情報 | 心理学 | セマンティック・ディファレンシャル法 | 白井市 | 因子分析 | 音響物理解析 | 自然音
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