九州大学、長崎大学およびイリノイ大学の研究グループは、エネルギーシステムの構築に係わる「文化的要素(例:エネルギー技術に対する選好)」を客観的に分析し、エネルギー政策に反映させることで、強靭・公正・効果的な再エネ移行が可能になる、と提言した。国・地域の脱炭素化に向けた野心的な取り組みには温度差が見られ、そうした差異と文化的要素との関連性が指摘されている(ex. A. Chapman et al., 2021)。先行研究では、文化的要素として所得、教育、年齢階級および居住地域(例:都道府県)に着目した分析が行われた。今回、同研究グループは、エネルギーシステムと文化的裏付けの関係解明に向けて、多民族国家であるアメリカを対象とする分析フレームを考案した。先ず、2020年に実施された全米調査(n=3,000)に基づき、7つの人種グループ(例:白人、ヒスパニック、黒人等)の再エネ6種に対する選好などを分析した。その結果、ハワイ先住民が地熱と太陽光を好むといった傾向をはじめ、他の人種間でも再エネ種の好みが顕著に異なることが分かった。本研究では次に、米国における人口動態の将来変化と電力インフラの地域差を反映させたエネルギーシステムを分析した。その結果、すべての人種集団が安定したエネルギー供給の必要性を認識しており、天然ガスとともに太陽光や風力を中心とした再生可能エネルギーを重視していることが明らかになった。これらの知見から、文化的要素の差異を考慮した市民指導(ボトムアップ)のエネルギーシステムデザインモデルが示唆された。このモデルを用いて天然ガス、石炭、原子力を含む、2050年のエネルギーの全体構成を推計したところ、再エネの移行率が約19%の増加する可能性があると見積もられた(米国エネルギー情報局予測値比)。米国以外の先進国にも適用可能なモデルであり、使用データの更新や世界のエネルギー情勢を加味することで、さらなる応用展開が可能になるという。こうしたエネルギーアナリシスを国際化し、各国の事情やニーズに合致したエネルギー政策等に活用したい、と抱負を添えている。
情報源 |
九州大学 NEWS(研究成果)
九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所 プレスリリース 長崎大学 プレスリリース |
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機関 | 九州大学 九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所 長崎大学 University of Illinois at Urbana-Champaign |
分野 |
環境総合 |
キーワード | アメリカ | エネルギーシステム | ボトムアップ | 人口動態 | 文化的要素 | 多民族国家 | 人種 | 電力インフラ | 市民指導 | エネルギーアナリシス |
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