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 スダジイタマバエ大発生(於:伊豆諸島)、南西諸島からの移入と天敵不在が原因

発表日:2022.11.15


  佐賀大学と森林総合研究所の研究者らは、伊豆諸島の南部で「スダジイタマバエ(学名:Schizomyia castanopsisae)」が大発生している原因を突き止めた。同種は、スダジイ(すだ椎)の花枝(かし)に虫えい(「虫こぶ」とも言う)を形成するタマバエの仲間。タマバエ(幼虫)の多くは植物などに寄生する。成虫は総じて小型であるが、巨木に虫えいを形成し、枯死させることもある。近年、伊豆諸島の一部の島ではスダジイタマバエが大量に発生し、スダジイの結実不良(凶作)が続いている。こうした生態系の変化に対し、同大学は先駆的な調査研究を行ってきた。その一環として、スダジイタマバエの分類学的地位と生態特性および伊豆諸島における分布と密度(徳田ら,2013)や、伊豆諸島の自然観察施設と共に鳥類の餌資源としての役割なども明らかにしている(内藤・徳田,2018)。本研究では、2011~2018年にかけて伊豆諸島のすべての有人島で実施した調査の結果に基づき、スダジイタマバエの“静かな侵略”メカニズムの解明に迫っている。伊豆諸島全域を見ると、スダジイタマバエの生息密度は南部(三宅島、御蔵島、八丈島、青ヶ島)で高く、北部の島々では低密度もしくは未確認といった状況であった。南部4島ではスタジイの花枝に虫えいが形成され、ドングリはほぼ見られなかった。他方、北部の伊豆大島や新島は南部に比べて低いレベルではあるが、直近では生息密度の増加傾向が認められた。すなわち、スダジイタマバエの分布域が北進している可能性が示唆された。三宅島のスダジイタマバエ個体数は1,000億匹オーダーに達していると見積もられた。各島の虫えいから寄生蜂は全く確認されず、遺伝子型(ハプロタイプ)の比較により、伊豆諸島のスダジイタマバエは南西諸島に由来することが分かった。その他にも、成虫の低温耐性、出現時期(4月)に関する新知見も得られた。伊豆諸島のスダジイタマバエは最近侵入した可能性が高く、天敵の不在が大発生を引き起こしていると推察された。地域住民の聞き取り調査により、ドングリの凶作は2000年代前半頃に始まり、20年近く続いていることが明らかになった。“静かな侵略”メカニズムの進行・長期化はスダジイの森や伊豆諸島の生態系に大きな影響をおよぼす可能性がある、と警鐘を鳴らしている。

情報源 佐賀大学 プレスリリース
森林総合研究所 プレスリリース
機関 佐賀大学 三宅島自然ふれあいセンター・アカコッコ館 八丈ビジターセンター 森林総合研究所
分野 自然環境
キーワード 天敵 | 三宅島 | 伊豆諸島 | ドングリ | 南西諸島 | スダジイタマバエ | 虫えい | 虫こぶ | ハプロタイプ | スダジイの森
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