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 クマ目線の映像~食べ物30種類以上を特定・食べ方の個体差も鮮明に!

発表日:2022.12.26


  東京農工大学を中心とする国際共同研究チームは、野生のツキノワグマにビデオカメラを搭載した首輪を取り付け、クリップ映像を分析する手法(以下『ビデオ分析法』)が、食生活の詳細解明に適用できることを実証した。同チームは、ビデオ分析法を用いてツキノワグマの繫殖行動に関する新知見を得ることに成功している。ツキノワグマの食性についても、体毛の炭素と窒素の安定同位体比を広域調査し、性別と年齢によって食べ物の種類が異なることを明らかにしている(Naganuma, T. et al., 2020)。本研究では、ビデオ分析法を採食行動の調査に導入し、糞の内容物を分析する手法(糞分析法)との精度比較を行っている。2018 年 5 月から 7 月にかけて、奥多摩山脈で4頭(オス2頭、メス2頭)の成獣に首輪を装着し、日中の採食行動を記録した(クリップの単位:15分間隔・10秒、撮影期間:平均41日)。その結果、植物質の食べ物30種類以上を識別し、口に入れている植物の葉や花などの部位、一部の果実については種類や属までを特定することができた。他方、動物質の食べ物については、ニホンジカの子どもやニホンカモシカの成獣、さらにはオスが繁殖行動の一環として行う子殺しに伴う捕食シーンなどが確認された。同じフィールドで実施した糞分析法では、15種類前後の食べ物は特定できたものの、糞サンプル内で植物の葉や花は原形をとどめておらず、哺乳類も体毛しか残っていなかった。採食頻度が低く、採食時間が短い食べ物は記録しきれないといった課題もあるが、従来法と併用することで個体ごとの食性の詳細把握が可能となる。きめ細かい被害防止策への貢献が期待できる技術、と結論している。なお、本成果の一部はYouTubeにて配信されている(コンテンツ名:ツキノワグマのお食事)。

情報源 東京農工大学 プレスリリース
機関 東京農工大学 イリノイ大学 東京農業大学
分野 自然環境
キーワード ツキノワグマ | 哺乳類 | 食性 | 食生活 | ビデオカメラ | 採食行動 | 糞分析法 | 奥多摩山脈 | 被害防止策 | ツキノワグマのお食事
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