国立環境研究所は、「フィトシアニン」と呼ばれるタンパク質群が植物にオゾン耐性を付与することを発見した。オゾンは光化学オキシダントの主成分であり、森林衰退や農作物被害の原因となっている。一方、植物は過酷な環境にも適応して生き延びるため環境応答機構を進化させてきた。既往研究により、植物がオゾンに適応するための環境応答機構(オゾン耐性機構)を有することが明らかになっている。本研究は、オゾン適応戦略としての植物の環境応答機構の解明(研究期間:2018~2020年度)の一環として、筑波大学つくば機能植物イノベーション研究センター・遺伝子実験センターの支援を受けて行われたもの。モデル植物(シロイヌナズナ)の突然変異系統を用いて、オゾン耐性機構に関与する新たな遺伝子を見出し、植物の高オゾン濃度への適応戦略として実際に機能している機構の一端を明らかにすることを目指した。先ず、ある特定の遺伝子から作られるタンパク質の量を強制的に増加させた系統群の種子から幼植物を育て、そのなかから生物環境調節実験施設内でオゾン暴露処理を行っても障害が生じにくい系統(オゾン耐性系統)を探索した。次に、単離したオゾン耐性系統の遺伝子やそれに対応するタンパク質を同定しつつ、様々な実験や各種データベース等の情報に基づき、それらの働きやオゾン耐性を付与した理由を調査した。その結果、未知タンパク質Xがフィトシアニンというグループに属するAtUC5であることが判明し、それが気孔の閉鎖と葉の細胞死を抑制していることが分かった。さらに遺伝子組換え植物について、詳細な解析を行ったところ、同タンパク質グループは細胞膜よりも外側の部分、細胞壁および細胞間隙(アポプラスト)に存在しており、細胞壁代謝やストレス応答のシグナル伝達にも関与していることが示唆された。本成果(新規オゾン耐性機構の発見)に基づく、オゾンに強い作物や樹木(オゾン耐性品種)の作出が期待される。
情報源 |
国立環境研究所 報道発表
筑波大学つくば機能植物イノベーション研究センター・遺伝子実験センター プレスリリース |
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機関 | 国立環境研究所 筑波大学つくば機能植物イノベーション研究センター・遺伝子実験センター |
分野 |
地球環境 環境総合 |
キーワード | シロイヌナズナ | 植物環境応答 | 環境適応戦略 | アポプラスト | フィトシアニン | オゾン耐性 | 生物環境調節実験施設 | AtUC5 | 気孔コンダクタンス | 細胞死 |
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