東京大学大学院農学生命科学研究科のTangpranomkorn特任研究員(当時)と藤井准教授、高山名誉教授、東京家政学院大学の石綱准教授、中部大学の鈴木教授らの研究グループは、植物の花粉発芽に必要となる「巨大なタンパク質」を発見した。──花粉発芽は、花粉が雄しべに付着し、成熟・乾燥・休眠状態になるところから始まり、雌しべに付着してから覚醒し、吸水・成長を再開する。しかし、このような性質がどのように切り替わっていくのか、メカニズムの詳細は十分理解されていなかった。──研究チームは、発光タンパク質ホタルルシフェラーゼを活用し、花粉を受け取ることで発光する雌しべを作出し、花粉の機能に関するDNA変異体を効率的にスクリーニングする独自の手法を用いて、シロイヌナズナのAtVPS13aタンパク質が花粉発芽に必須であることを見出した。AtVPS13aは、約4,000アミノ酸からなる長鎖のポリペプチドで、非常に大きな分子である。また、細胞内でリン脂質を輸送するチャンネルとして機能し、花粉の吸水時にカルシウムイオンを感知して花粉管発芽部位に局在化する。この手法は非常に効率的で、今回の発見は、植物の生殖制御に役立つことが期待される。──研究グループは今後、VPS13aの機能をさらに詳しく調べ、植物の生殖制御技術の発展、他の植物種への応用、花粉発芽に関わる他の分子の同定も進め、農業や園芸分野を中心に応用研究を展開するという。