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 雪崩が大規模化する?!+4℃計算実験から新たなリスクが浮き彫りに

発表日:2022.12.22


  森林総合研究所は、温暖化による雪崩の災害リスクを広域的に評価した。雪崩による死亡事故や森林・林産加工施設等の被害が多数報告されている。国は令和3年度に「降積雪期における雪崩等山地災害の未然防止について」を発し、防災態勢の一層の強化を呼びかけている。また、大規模な被害を経験した地域では、なだれ防止保安林や雪崩予防柵、雪崩防護壁などの整備が進められている。温暖化が進行すると雪は降らなくなり、雪崩災害リスクが小さくなるとの見方が強い。しかし、北陸地方のドカ雪など、大雪の高頻度化も予想されていることから、雪崩災害への適応策検討が急務となっている。雪崩は、積雪の状態や雪の乾き具合(乾雪/湿雪)によってさまざまな姿を見せる。ある一点から発生するものもあれば、すべての積雪層が面的に動き出すものもある(点発生/面発生)。本研究では、雪面に近い上層が高速で流下し、被害面積・地域が拡大する恐れのある「乾雪表層雪崩」に着目している。このタイプの雪崩の発生には、積雪内部の「相対的に強度の弱い層(以下『弱層』)」が関与している。弱層は、特定の雪質(新雪、こしもざらめ雪)において形成されやすいと考えられている。このようなメカニズムを踏まえ、北日本における弱層の形成頻度と、板状の性格を持った積雪層(スラブ)の過負荷に関する大規模アンサンブル気候シミュレーションが行われた。現在気候を1951年~2011年に、将来気候を産業革命以前と比較して全球平均気温が4℃上昇した年代(2051年~2111年相当)に設定し、将来変化を見積もった結果、北日本全体としては弱層の形成頻度が減少する傾向にあることが明らかになった。本成果の最大の特長は、雪質ごと、20 kmメッシュごとに、乾雪表層雪崩の相対的な増減率を出力できることである。弱層の形成頻度が減少する一方で、一部山岳地域における雪崩の大規模化が予測された。これまで言及されてこなかった「雪崩の規模」への留意を提言している(世界初)。過去の雪崩被害に基づく対策の推進では不十分と指摘しつつ、本手法・新知見に基づく対策実施地区の優先順位付け等が有効、と考察している。

情報源 森林総合研究所 プレスリリース
機関 森林総合研究所
分野 地球環境
自然環境
大気環境
環境総合
キーワード 適応策 | スラブ | 雪崩 | 降積雪期における雪崩等山地災害の未然防止について | 雪崩災害リスク | 乾雪表層雪崩 | 新雪 | こしもざらめ雪 | 大規模アンサンブル気候シミュレーション | 雪崩の規模
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