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 熱帯多雨林の花盛り、商用衛星プロダクトで面的・動的変化が観測可能に

発表日:2023.02.08


  海洋研究開発機構(JAMSTEC)と宮崎大学を中心とする国際共同研究チームは、ボルネオ熱帯多雨林の一斉開花現象を世界で初めて衛星観測により広範囲にとらえた(掲載誌:Ecological Research)。東南アジアの熱帯多雨林は一年中高温湿潤で常夏であるが、林内は一年中花盛りというわけではなく、通常は花が少ない。日本のように1年に必ず1回花を咲かせるわけではなく、不規則な間隔で起きる乾燥や低温ストレスを原因として、1〜10年に1度様々な樹種が同調して花を咲かせる。また、始めに開花した樹種の後には、複数の樹種が約3ヶ月間にわたりバトンタッチしていくように花を咲かせていく。このユニークな開花現象(以下「General flowering : GF」)の理解に向けて、低地フタバガキ科混交林のなかに設置した観測タワーや林冠クレーンにおける目視観測や、タイムラプスカメラを用いた定点撮影などが行われている。しかし、それらの手法は調査範囲に限りがあるため、GFを広範囲にとらえ、その詳細を評価するには未だ至らぬ状態にあった。本研究は、熱帯多雨林における光合成や蒸発散を介した大気と植生の相互作用や、気候変動に対するその応答性を知る上で、GFの空間的広がりや時間的ダイナミクスの特性解明が不可欠という考えに基づき、GF観測における衛星リモートセンシングの可能性を世界で初めて追求したもの。2019年にボルネオ島の北西部(マレーシア国)にあるランビルヒルズ国立公園で観測されたGFに焦点を当てている。同地の植物季節を観測するために、米国の高頻度高解像度衛星・PlanetScope(運用:Planet Labs社)のプロダクトを使用した。PlanetScopeは、180機以上からなる衛星コンステレーションで、地上分解能3~4 mをもってほぼ毎日、高度475-525 kmから全球上のあらゆる地点を観測している。目視観測等の結果と照らし合わせたところ、PlanetScopeが取得した分光データによるRGB合成画像が、白やオレンジに変わる種の樹冠を検出、すなわちGFの空間的な特徴を“ほぼ個体レベル”でとらえていたことが明らかになった。また、GF進行中の画像を比較検証することで、広域的なGFの経日変化をはじめ、開花のピークと種の違いなども評価できることが分かった。本成果は目視観測等との整合性も高く、熱帯フェノロジー研究への応用展開や、東南アジアの生物多様性保全にとって重要な知見の充実化に大きく貢献するものである、という。

情報源 海洋研究開発機構 プレスリリース
宮崎大学 プレスリリース
横浜市立大学 プレスリリース
機関 海洋研究開発機構 宮崎大学 横浜市立大学 高知大学
分野 自然環境
キーワード 生物多様性 | 生物季節 | 一斉開花 | 高頻度高解像度衛星 | 熱帯多雨林 | PlanetScope | 衛星コンステレーション | ボルネオ | 分光データ | RGB合成画像
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