摂南大学、琵琶湖博物館および京都大学などの研究グループは、琵琶湖固有の魚類である「ビワマス」に国際的な学名「Oncorhynchus biwaensis(オンコリンカス・ビワエンシス)」を新たに付与したと発表した。
ビワマスは、琵琶湖にのみ生息するサケ科の魚で、古くは江戸時代の文献にもその存在が記されていた。1925年には米国の研究者によって「Oncorhynchus rhodurus」として新種記載されたが、1990年の研究によりそのタイプ標本がビワマスとは異なる種であることが判明し、以降ビワマスには正式な学名が存在しない状態が続いていた。
今回の研究では、近縁種であるサクラマス(ヤマメ)やサツキマス(アマゴ)との形態的・遺伝的比較を実施。縮約的核ゲノム分析により、交雑のない純粋なビワマス標本を特定し、詳細な形態分析を通じて他種との明確な違いを示された。すなわち、今回の学名付与により、ビワマスは国際的にも独立した種として認識されることとなり、保全対象種としての位置づけが明確になる。――琵琶湖周辺では漁業や食文化において重要な存在である一方、河川改修や近縁種との交雑などにより、生息環境は危機的状況にある。研究者らは、今回の新種記載が保全活動の推進につながることを期待している。なお、琵琶湖博物館では、7月19日から特設展示を開催し、今回の研究で使用されたタイプ標本(ホロタイプ・パラタイプ)を期間限定で公開する。