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 気候変動(症状)の緩和策(薬)は貧困増加(副作用)をもたらす

発表日:2023.07.14


  京都大学、立命館大学および国立環境研究所の研究チームは、「気候変動緩和策(以下『緩和策』)」が貧困を悪化させる可能性があることを指摘した。本成果は、パリ協定やグラスゴー気候合意下の長期気候目標(1.5℃目標)に一石を投じるものとなっている。世界平均気温の上昇を抑える上で、GHG排出量の72%を占めるOECD非加盟国の動向が重要となっている。現在、そうした国々を含め、炭素排出量を減らす動きが活発化しているが、緩和策が各国・各地域の貧困におよぼす影響については明確な結論は出ていない。近年では、緩和策の推進をめぐり、貧困層が不当な経済的負担を強いられる恐れがあることも指摘されている。このような状況を踏まえ、同研究チームは、パリ協定に基づく将来の気候変動緩和シナリオに数値モデル(AIM: Asia-Pacific Integrated Model)を適用し、さまざまな社会経済条件を入力して、エネルギー消費量、二酸化炭素排出量、土地利用、GHG排出削減に伴う「経済影響」と「貧困人口」を分析した。その結果、2030・2050年の時点で、緩和策を行ったケースではそれぞれ6,500万人、1,800万人の貧困人口を増加させる可能性があることが明らかになった(緩和策をとらないベースラインケース比)。今回のシミュレーションでは、貧困人口の増加には2つの要因(所得効果、価格効果)が関与していることが分かった。前者は緩和策によるマクロ経済的な損失が所得を減少させる効果を指し、後者は炭素税の導入などによる家計消費の負担増(例:エネルギー、食品)などを指している。また、貧困人口の増加には地域差があることが分かり、アジアとアフリカで顕著な影響が見られたという。緩和策の推進に当たっては、1.5℃目標の達成一辺倒ではなく、副作用の存在を理解し、その軽減について考慮する必要がある、と結んでいる(掲載誌:Sustainability Science)。

情報源 国立環境研究所 報道発表
機関 京都大学 立命館大学 国立環境研究所
分野 地球環境
環境総合
キーワード 経済影響 | パリ協定 | AIM | 1.5℃目標 | 気候変動緩和策 | OECD非加盟国 | 気候変動緩和シナリオ | 貧困人口 | 所得効果 | 価格効果
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