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 草原植生の“しおれ”点をキャッチ!GOSAT観測データの活用幅拡がる

発表日:2023.10.16


  国立環境研究所は、温室効果ガス観測技術衛星「GOSAT(愛称:いぶき)」がとらえた太陽光誘起クロロフィル蛍光(SIF: Solar-Induced chlorophyll Fluorescence)のデータを用いて、植生がまばらな草原において「植物が萎れ始めるポイント(wilting point、萎凋点)」をいち早く検出する手法を構築した。2009年1月23日に打ち上げられたGOSATは順調に稼働しており、メインミッションであるCO2・CH4(メタン)の観測を継続している。GOSATはCO2等のみならず、酸素(O2)の吸収波長も観測している。O2とSIFの波長帯は重なり合う部分があることから、2011年に入り、SIFの導出、すなわちGOSATによるSIF観測が実現した。その後、GOSATシリーズ(GOSAT-2を含む)の観測データは世界のSIF研究に貢献している。SIFは植物の生理学的ストレスを評価する指標として有望視されている。しかし、頻発化、常態化が懸念されている「干ばつ(乾燥ストレス)」を衛星観測データで評価する試みは未だ行われていなかった。最大の課題は、植物の「目に見える損傷(葉色の変化等)」が、データ解析における因果関係の判断を惑わせる要因(交絡)となることであった。本研究では、GOSATの時系列データ(2009~2018年末)を用いて葉の色素含有量と葉の量を推定することで、交絡要因となる「目に見えるダメージ」と「生理的なしおれ(土壌水分の低下)」を区分している。今回、モンゴル平原の草原を対象とするモデルシミュレーションを実行した結果、SIFと土壌水分との間に新たな非線形応答が見い出され、しおれ点(推定値)は地上で観測された値とよく一致していることが確認された。SIFが陸域植生の光合成活性を評価する指標として有効であることを裏付ける成果であり、本手法による他の陸域生態系における干ばつダメージの予測、さらには地球規模の炭素循環の理解促進等が期待される(掲載誌:Journal of Geophysical Research: Biogeosciences、DOI:https://doi.org/10.1029/2022JG007074)。

情報源 国立環境研究所 報道発表
機関 国立環境研究所
分野 地球環境
キーワード GOSAT | 干ばつ | いぶき | 炭素循環 | 光合成 | 土壌水分 | SIF | 太陽光誘起クロロフィル蛍光 | モンゴル平原 | モデリングアプローチ
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