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 そのコンクリートは空気中のCO2を固定していますか?

発表日:2023.11.24


  東京大学大学院工学系研究科・丸山教授らの研究チームは、 “CO2固定を訴求するコンクリート(以下「炭酸塩固定製品」)”の真贋を、炭素同位体(14C)の含有率を用いて見分ける手法を開発した。コンクリート(セメント+水+骨材等)はインフラの基本的な部材であり、“世界的な消費量が水に次いで2番目に多い材料”とも言われている。主要な構成材料であるセメントは、石灰石(天然の炭酸カルシウム)などを粉砕・混合し、焼き固めるプロセス(焼成)等を経て、工業的に生産されている。石灰石は悠久の時を経てCO2を閉じ込めた岩石であるが、焼成温度領域まで加熱すると炭酸カルシウムが分解し、CO2が排出される。また、原料の輸送、焼成プロセスなどには多くの化石燃料が投じられている。セメント産業のCO2大量排出(エネルギー多消費)はかねてから指摘されており、カーボンニュートラル時代を迎え、CO2収支の改善に向けた取り組みがサプライチェーン全体に拡がっている。そうした動きがあるなか、コンクリート中に炭酸カルシウムを析出させて長く用いるCO2回収・有効利用・貯留(CCUS)するという技術コンセプトが生まれ、“CO2排出の相殺手段”として有望視されるようになった。セメントのヘビーユーザーである建設産業をはじめ、コンクリートに関わるセクター全体が炭酸塩固定製品に大きな関心を寄せている。本研究は、NEDOのグリーンイノベーション基金プロジェクト「コンクリートにおけるCO2固定量評価の標準化に関する研究開発」の一環として行われたもの。同研究チームは、真の炭酸塩固定製品は直接空気回収(DAC: Direct air capture)によるCO2を固定したコンクリート等、としている(暫定的な定義)。すなわち、養生中にセメント水和物(水酸化カルシウム)と大気中のCO2が反応して炭酸カルシウムを生成する反応(炭酸化反応)が、真贋見極めのポイントとなる。炭酸化反応(中性化とも言う)のメカニズムや鉄筋コンクリートにおよぼす悪影響は古くから知られているが、DACによるCO2固定そのものを定量する方法は確立されていなかった。本研究では、名古屋大学宇宙地球環境研究所・タンデトロン年代測定研究グループ所有の炭素同位体測定装置を駆使することで、信頼度の高い判別(証明)ができることを実証している。本成果を発展させることで、炭酸塩固定製品のトレーサビリティが総合的に確保され、真の製品のみによる健全な排出権取引が実現するであろう、と結んでいる(掲載誌:Journal of Advanced Concrete Technology、DOI:10.3151/jact.21.934)。

情報源 東京大学大学院工学系研究科 プレスリリース
機関 東京大学大学院工学系研究科 名古屋大学宇宙地球環境研究所
分野 環境総合
キーワード コンクリート | 炭酸カルシウム | セメント | 炭素同位体 | 石灰石 | DAC | 炭酸塩固定 | 焼成 | CO2回収・有効利用・貯留 | グリーンイノベーション基金プロジェクト
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