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 ニホンモモンガからの示唆?!スギ人工林の新たな方向性

発表日:2023.12.05


  森林総合研究所は、ニホンモモンガ(英名:Japanese Flying Squirrel; JFS、別名:ホンドモモンガ)の生態情報を集約し、生物多様性に配慮した人工林管理のあり方を導出した。ニホンモモンガ(以下「モモンガ」)は体長15~20 cmほどのリスの仲間。大きな眼や飛膜(ひまく)を使って樹間を飛び回る姿が人々の心を惹き付けている。絶滅危惧種・準絶滅危惧種に指定している都府県が多く、地域では保全回復に向けた動きが活発化している。近年、スギ人工林(以下「人工林」)に多くの個体が生息していること、スギの恵みを受けて生活していること等が報告されている。しかし、目撃例は意外に少なく、モモンガの生態については断片的な知見が散在していた。本研究では、モモンガが人工林を好む理由や、未だ謎に包まれている林内の行動習性などを解明するために、既往文献のメタ分析を行っている。具体的な手順は、目撃情報が記載された文献の収集、生息地・営巣木・繁殖の有無・食性・滑空移動などに係わる情報の集約といった流れ(分析対象:33文献)。集約の結果、モモンガが発見された場所の約6割は人工林や人工林と隣接する二次林・天然林が占めていること、人工林では樹洞(キツツキが空けた穴や樹皮がはがれて腐った部位)に営巣し、巣材に樹皮を利用していること、が明らかになった。また、滑空移動の際に樹高の高いスギによく着地することから、滑空移動の中継点として樹高の高いスギが役立つようであること、葉や花、芽、種子などを採食しており、冬季はスギの雄花を良く食べていること、が示唆された。総じて、人工林はモモンガの食・住・滑空ルート保全に役立っていると結論している。現在の人工林はモモンガの生息適地となっている場合もあると思われるが、人工林の環境は管理、施業のあり方次第で大きく変化する。主伐は小面積での皆伐とし、間伐は滑空移動が可能な幅の列状間伐を採用するといった配慮や、樹洞ができたスギの間伐時に代替巣箱を設置することで、モモンガと共存可能な環境を維持・創出できると提案している。“ニホンモモンガとの持続的な共存を目指した人工林管理のガイドライン”の必要性が高まっており、本成果および継続調査の結果を踏まえた創意工夫の反映が期待される(DOI:10.25225/jvb.23054)。

情報源 森林総合研究所 プレスリリース
機関 森林総合研究所
分野 自然環境
キーワード 生物多様性 | 絶滅危惧種 | スギ | スギ人工林 | ニホンモモンガ | モモンガ | 人工林管理 | 樹洞 | 滑空移動 | 生態情報
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