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 グリーンなはずのトイレットペーパー…現行システムでは生態系へのダメージ懸念

発表日:2024.01.12


  岩手大学人文社会科学部 寺崎教授らの研究グループは、再生パルプに含まれている「増感剤」がトイレットペーパーに残存し、下水処理場を経て、実河川に流出していることを突き止めた。紙の3R(リデュース・リサイクル・リユース)が推奨され、バージンパルプを再生パルプに置き換えた製品が広く普及するようになった。一方、紙は印刷技術や時代のニーズとともに進化し、UV印刷用紙や感熱記録紙などが開発されてきた。最近、古紙リサイクル工場の廃液中に、特殊印刷が施された古紙のインクや使用済みの感熱記録紙の表面に塗工された薬品等に由来する「増感剤」が含まれている事例が報告された。環境に放出された増感剤は、水生動物相に蓄積し、生態系の破壊につながる可能性がある。本研究では、再生パルプを使用したトイレットペーパー(以下「再生トイレットペーパー」)のライフサイクルを踏まえ、先ずアレルギー反応の惹起など、ヒトに対するばく露影響(感作性)のレベルを確認し、その上で実河川における綿密な汚染状況調査を行っている(調査場所:北上川流域・10地点、調査期間:2020~2022年)。その結果、再生トイレットペーパーには国内外で使用実績のある増感剤が明らかに残存しており、再生トイレットペーパーそのものだけではなく採水サンプルにも8種類の感作性を呈する物質が比較的高い濃度で含まれていることが明らかになった。また、汚染状況調査の結果を流域の下水処理場(5施設)の位置と照らしたところ、再生トイレットペーパーに由来する増感剤・感作性物質は下水処理場を経由して河川へ流出していることが確実と見られた。現在、増感剤の環境基準や再生紙製品の含有量を規制する施策はない。本成果を契機とする、世界的な実態解明の本格化、新たな浄化技術の開発、新たな制度や製品基準の創出が期待されるという(掲載誌: Environmental Chemistry Letters,DOI: https://doi.org/10.1007/s10311-023-01686-z)。

情報源 岩手大学 人文社会科学部 研究紹介一覧
機関 岩手大学
分野 ごみ・リサイクル
健康・化学物質
水・土壌環境
キーワード 環境基準 | 下水処理場 | 再生紙 | 水質汚染 | 古紙 | 感熱紙 | 北上川 | 増感剤 | 感作性 | 再生パルプ
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