東北大学学際科学フロンティア研究所の笘居(とまい)教授らの研究グループは、水熱反応場を利用してCO2還元反応(CO2RR)プロセスの高効率化を実証した。CO2RRとは、電気分解によりCO2を分解し、化学的に有用な物質に変換する反応。この研究では、CO2で加圧した150℃、100気圧の高温高圧水条件で電気分解を行うことで、CO2の高い拡散係数と溶解度により、電極へのCO2供給が促進され、プロセスのエネルギー効率が大幅に改善されることが分かった。また、再生可能エネルギー由来の電力と工場の未利用低温廃熱を利用することで、CO2吸収量が排出量を上回る「カーボンネガティブ」な基礎化学品(メタノール)の合成が可能であることも示された。──この成果は、CO2を高効率に還元・再資源化する新たな炭素・熱循環スキームを提案し、炭素完全循環社会の実現に向けた化学産業の変革に貢献する可能性がある。研究チームは今後、さらなる効率改善に向けた技術的検討や工業的な大規模適用のためのプロセス設計、実証実験を進める予定である。また、水熱反応場は高濃度の有機物溶解が可能な環境でもあり、CO2に限らず廃プラスチックやバイオマスの高効率な電気化学的変換・資源化を実現する可能性がある。──笘居教授は「次世代の持続可能な循環型社会において水熱反応場を利用した電解技術が重要な役割を果たすことが期待される」と述べている。