京都大学の土居教授、島根大学の高原教授、神戸大学の源教授らの研究グループは、島根県の宍道湖における「沈水植物の大量繁茂を管理・抑制することに特化した環境DNA(eDNA)手法」を開発した。この手法は、生物から脱落した組織などに由来する環境中のDNAを指標に、対象種の在不在やバイオマスを簡便に推定できる技術である。本研究では、同地で大量繁茂しているツツイトモとリュウノヒゲモを対象に、eDNA濃度を基にバイオマスを推定する手法を開発し、宍道湖沿岸6地点でサンプルを分析した。2016年から2022年までの7年間にわたる調査により、両種のeDNA濃度の年変動および季節変動が明らかになった。具体的な成果として、リュウノヒゲモのeDNA濃度が増加していることが挙げられる。また、冬季でも両種のeDNAが検出できることや、塩分耐性の違いが両種のバイオマスに影響を与えていることが示唆された。──研究者は「私たちの知る限り、長期的なeDNAモニタリング調査によって汽水湖における沈水植物のバイオマスの増減を評価し、その原因を明らかにした初めての研究です。今後は、得られた研究成果をもとに、地域社会や行政と協力し、宍道湖の環境保全や地域貢献の一助にできればと考えています」とコメントしている。この研究成果は、国際学術誌「Estuarine, Coastal and Shelf Science」に掲載された。