東京大学大気海洋研究所とフランス国立科学研究センターの研究グループは、キングペンギンが深度100メートルを超える暗い海中で魚を捕食する瞬間の映像を、世界で初めて撮影することに成功した。これまでペンギンの捕食行動は浅海域での観察に限られており、深海での行動は不明であった。<b> 研究では、赤色LEDを搭載した小型ビデオカメラをキングペンギンの背部に装着。赤色光はペンギンや深海生物にほとんど知覚されないため、自然な行動を妨げることなく撮影が可能となった。映像解析の結果、キングペンギンは魚の数メートル手前から狙いを定め、魚に気づかれることなく接近し、極めて高い成功率で捕食していることが明らかとなった。
キングペンギンは他のペンギン種と異なり、太陽光が届かない深海まで潜水する能力を持つ大型種である。今回の成果は、鳥類であるペンギンがどのようにして暗黒の海中環境に適応してきたのかを理解する上で重要な知見を提供する。研究チームは、今後このような技術を用いることで、他の海洋生物の深海適応戦略の解明にもつながると見ている。本研究成果は、米国生態学会の学術誌『Ecology』に掲載された。