大阪大学大学院工学研究科・兼本准教授らの研究グループは、過去の波形データに潜む「類似性」を活用し、少ないデータ量でも高精度な波形再現を可能にする省エネ計測システムを開発した。本システムは、生成AIのようなブラックボックス的手法を用いず、明示的な数理モデルに基づいて設計されている。
従来の計測システムでは、データ量を削減して省エネ化を図ると、計測精度が低下するという課題があった。これに対し本研究では、2023年に提案された波形類似性理論を応用し、過去の波形と新たな波形との構造的な共通性を利用することで、少ないデータからでも高精度な再現を可能にした。実証実験では、脳波波形を用いた無線計測システムを市販の電子部品のみで構築し、72μWという極めて低い消費電力での動作を実現した。これは、従来の専用集積回路による記録(90μW)を上回る成果である。
さらに、500回の計測において平均NMSE(正規化平均二乗誤差)0.116という高精度を達成しており、医療・介護分野におけるウェアラブル機器や、社会インフラの異常検知センサーなどへの応用が期待される。特に、エナジーハーベスターを電源とする半永久的な動作が可能なIoTデバイスの実現に向けた技術的基盤として注目される。
本研究成果は、バッテリーフリーかつメンテナンスフリーな計測技術の実現に道を拓くものとなり得る。回路とシステム分野で最も権威ある国際会議の一つ「IEEE ISCAS 2025」にて発表され、査読を経て採録された。
情報源 |
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機関 | 大阪大学 |
分野 |
環境総合 |
キーワード | 省エネルギー | バッテリーフリー | IoTセンサー | メンテナンスフリー | 波形再現 | 類似性解析 | 圧縮センシング | 無線計測 | 生体信号 | ウェアラブル機器 |
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