国際農研と国際熱帯農業研究所(IITA)の研究グループは、西アフリカ乾燥サバンナ地域において、乾燥と過湿という相反する環境ストレスに同時に耐性を示すササゲ(Vigna unguiculata)の遺伝資源を発見した。
ササゲは現地農村における主要なタンパク源であり、気候変動による干ばつや豪雨の頻発が生産に深刻な影響を及ぼしている。今回の研究では、IITAが保有する99系統のササゲ(栽培種および祖先野生種)を対象に、乾燥および過湿ストレスへの耐性評価を実施。その結果、祖先野生種9系統と栽培種1系統の計10系統が両ストレスに耐性を示した。特に注目された祖先野生種の1系統は、過湿条件下で根に通気組織を発達させて酸素供給を確保し、乾燥条件下では水分輸送効率を高める構造を持つなど、根の形態を環境に応じて柔軟に変化させる能力を有していた。さらに、複数の生理・形態指標を組み合わせた評価により、ササゲの土壌水分応答の多様性を包括的に可視化できることが示された。従来は乾燥耐性に重点が置かれていたが、今後は過湿ストレスも考慮した品種開発が求められる。
本研究で発見された祖先野生種は栽培種との交雑が可能であり、一般的な交雑育種法を通じてその耐性能力を導入できる可能性がある。研究者は、今後の遺伝解析を通じて根の形態変化に関わる遺伝子座の特定を進め、気候変動下でも安定生産が可能なササゲ品種の開発を目指すとしている(掲載誌:Frontiers in Plant Science)。