東京大学大学院工学系研究科の研究グループ(久保亘修士課程・澤田洋平准教授)は、地球温暖化に伴い発生が懸念される「気候ティッピング」の予測可能性を定量的に評価する新たな手法を開発した。気候ティッピングとは、地球システムが不可逆的に大規模変化する現象であり、アマゾン熱帯雨林の大量枯死や大西洋南北熱塩循環の停止などが代表例として挙げられる。
従来の研究では、気候ティッピングの予測に関するシミュレーションが多数行われてきたが、「そもそも予測可能なのか」という根本的な問いには答えが示されていなかった。本研究では、天気予報分野で用いられる「予測可能性」の概念を応用し、データ同化を用いた観測システムシミュレーション実験を実施。仮想的な地球モデルと観測データを統合することで、気候ティッピングの予測可能性を解析した。
その結果、①気候ティッピング自体の観測がなくても予測は可能であること、②予測にはシグナルノイズ比が1を超える高精度な観測データが必要であることが明らかとなった。これにより、気候ティッピングの予測が理論的に可能であることが示された一方、現状の観測体制では正確な予測は困難であることも示唆された。
本研究は、気候ティッピングの予測可能性に初めて科学的な根拠を与えた点で新規性が高く、今後はこの手法を活用して、地球温暖化に対する緩和策・適応策の策定に貢献することが期待される。研究は、科研費「基盤研究B」および科学技術振興機構ムーンショット型研究開発事業の支援を受けて実施された。
情報源 |
東京大学大学院工学系研究科 プレスリリース
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機関 | 東京大学大学院工学系研究科 |
分野 |
地球環境 |
キーワード | 地球温暖化 | 気候変動 | 緩和策 | 適応策 | データ同化 | 熱塩循環 | アマゾン熱帯雨林 | 観測システム | 気候ティッピング | シグナルノイズ比 |
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