東京大学大学院農学生命科学研究科(森林風致計画学研究室)の香坂玲教授らは、国連生物多様性条約(CBD)第15回締約国会議(COP15)で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)」のモニタリング枠組に関するカバー状況と課題を分析し、今後の改善に向けた提言をとりまとめた(掲載誌:Nature Ecology & Evolution)。
GBFは、2030年までに生物多様性の損失を食い止めるための国際的な行動枠組であり、その進捗を測定するためのモニタリング指標が設定されている。香坂教授らは、CBDの専門家グループ(AHTEG)によるギャップ分析を踏まえ、独自に3つの実施シナリオを設定。必須指標のみを用いる場合、分解項目を加える場合、さらに任意指標も含める場合の3段階で、GBFの目標・ターゲットに対する指標のカバー率を評価した。その結果、最も包括的なシナリオであっても、GBFの構成要素のうち12%が指標でカバーされていないことが判明した。特に、分野横断的な課題や制度的・構造的な制約が、各国のモニタリング体制の整備を困難にしていることが明らかとなった。
香坂教授らは、こうした課題に対処するため、短期的には既存指標の補完とデータ収集体制の強化、長期的には市民科学や先住民・地域コミュニティ(IPLCs)との連携による包括的なモニタリング体制の構築を提言している。――2026年に予定されている第7回国別報告は、GBFの実効性を初めて評価する重要な機会であると位置づけられている。香坂教授は、CBD技術会合の専門家としても活動しており、政策と科学の橋渡しを担う立場から、各国の実施能力を高めるための国際的な協調の必要性を主張している。
情報源 |
東京大学大学院農学生命科学研究科 NEWS
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機関 | 東京大学大学院農学生命科学研究科 |
分野 |
自然環境 |
キーワード | CBD | 生物多様性枠組 | 市民科学 | モニタリング指標 | 昆明・モントリオール枠組 | 国際協調 | 国別報告 | AHTEG | 指標ギャップ分析 | IPLCs |
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