広島大学の研究グループ(自然科学研究支援開発センター、スマートソサイエティ実践科学研究院、大学院先進理工系科学研究科)は、ナトリウムを用いた新しいアンモニア合成技術を開発した。従来のハーバー・ボッシュ法では、約500℃・250気圧以上の高温高圧条件と貴金属触媒が必要とされていたが、本技術では、ナトリウム単体を反応体として用い、約400℃・10気圧以下の条件でアンモニアを合成可能であることを実証した。
本技術の核となるのは「ケミカルルーピングプロセス」である。これは、反応体であるナトリウムが窒素と反応して中間体(NaNx)を形成し、次に水素と反応することでアンモニアを生成し、ナトリウムが再生されるという循環型の反応機構である。このプロセスにより、ナトリウムは消費されずに繰り返し使用可能であり、資源効率の面でも優れている。
実験では、水素化ナトリウム(NaH)を用いて、375℃で最大550μmol/g·hの反応速度を達成。これは従来のLiやNa合金触媒よりも高く、ルテニウム触媒には及ばないものの、貴金属を用いない技術としては高い性能を示した。また、1.0MPaの圧力下でのケミカルルーピング実験により、安定したアンモニア生成が複数サイクルにわたって確認された。
本研究は、ナトリウムという地球上に豊富な元素を活用し、希少資源に依存しない持続可能なアンモニア合成技術の原理を確立したものである。今後は、触媒担体の選定や反応条件の最適化、反応メカニズムの詳細解明、スケールアップ実験を通じて、実用化・社会実装への展開が期待される(掲載誌:International Journal of Hydrogen Energy)。
情報源 |
広島大学 ニュース&トピックス(研究成果)
|
---|---|
機関 | 広島大学 |
分野 |
地球環境 ごみ・リサイクル |
キーワード | 再生可能エネルギー | 分散型エネルギー | 水素キャリア | ナトリウム | アンモニア合成 | ケミカルルーピング | 貴金属フリー触媒 | 元素戦略 | 反応中間体 | 低圧反応技術 |
関連ニュース |
|