名古屋工業大学と神奈川大学の研究グループは、フッ素系高分子「PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)」およびPFAS(ペルフルオロアルキル・ポリフルオロアルキル物質)を、常温・常圧で分解し、フッ素資源として再利用可能なフッ化ナトリウム(NaF)へと変換する新技術を開発した。従来、これらの分解には高温焼却が必要であり、エネルギー消費や有毒ガスの発生など環境負荷が課題とされていた。
PFASは、OECDの定義によれば「少なくとも1つのCF₃またはCF₂基を含むフッ素化合物」であり、耐久性が高く、環境中に長期残留することから、POPs条約の対象物質にも含まれる。PTFEはフライパンのコーティングや半導体部品などに広く使用されているが、廃棄時の処理が困難である。
本研究では、金属ナトリウム分散体(ミネラルオイル中に微粒子状ナトリウムを分散させた液体)を用い、THF溶媒中でPTFEに対して2倍量の分散体を加えることで、97%の高収率でNaFを生成することに成功した。生成物の構造解析にはラマン分光法、赤外分光法、SEM、EDSなどが用いられ、アモルファス構造の不飽和炭素骨格が確認された。さらに、PFNA、PFOA、PFBS、TFAなど多様なPFASにも同様の分解・脱フッ素化が可能であることが示された。この技術は、従来の高温処理に比べてエネルギー消費を抑え、有害ガスの発生も防ぐことができる。回収されたNaFは、国内でフッ素化合物の製造に再利用可能であり、輸入原料への依存を減らす資源循環技術として注目される。
本研究は、JST CREST「分解・劣化・安定化の精密材料科学」領域の支援を受けて実施され、成果は「Nature Communications」誌に掲載された。