宇都宮大学は、マイクロプラスチックの毒性が粒子サイズと生物の発育段階によって変化することを示す新たな知見を発表した(掲載誌:Journal of Applied Toxicology)。本研究は、淡水生物であるオオミジンコ(Daphnia magna)をモデルに、ポリスチレン製マイクロビーズ(3 µmおよび30 µm)を用いて、3種の曝露条件下で毒性影響を評価したものである。
近年、マイクロプラスチックによる水環境汚染が深刻化しており、特にプランクトンなどの小型水生生物への影響が懸念されている。従来の化学物質評価法では、粒子のサイズや形状、素材の多様性に加え、生物の摂食行動や発育段階による影響を十分に捉えることが困難であった。
本研究では、単一サイズでの連続曝露、サイズ混合での連続曝露、発育段階に応じた段階的曝露の3条件を設定。その結果、3 µm粒子は初期発育段階で、30 µm粒子は後期発育段階で顕著な毒性を示すことが明らかとなった。これは、ミジンコの成長に伴う口器サイズの変化(gape limitation)により、摂取可能な粒子サイズが異なることに起因すると考えられる。混合サイズでの曝露では、発育段階に応じた摂取傾向が確認され、段階的曝露では、単純な平均濃度では見落とされる毒性影響が浮き彫りとなった。これらの結果は、マイクロプラスチックの環境リスク評価において、粒子サイズと生物のライフステージを考慮した動的な評価枠組みの必要性を示している。――今後は、より多様な形状・素材のマイクロプラスチックに対する評価を他の動物種や生態系に拡張し、環境政策への応用も視野に入れた研究を進めていくという。