国土交通省は、令和5年住生活総合調査の確報集計結果を公表した。本調査は、住生活基本法に基づき、住宅および居住環境に対する満足度や住み替え意向などを把握するため、5年周期で実施されている。今回は、全国約11万世帯を対象に、「住宅の維持管理や住み替えの実態、今後の意向など」が詳細に分析された。
調査結果によれば、住宅・居住環境に対する総合評価は過去10年間で大きな変化は見られず、特に「住宅」に対する不満率は低下傾向にある。一方、「居住環境」に関する不満率は横ばいで推移しており、騒音や防犯性、災害への安全性などが課題として浮かび上がっている。特に借家に居住する単独世帯(64歳以下)や高齢者世帯では、遮音性や防犯性に対する不満が顕著である。
住宅の維持管理に関しては、「定期的に点検をしている」と回答した世帯は一戸建てで約2割にとどまり、修繕履歴の記録保管や費用確保などの対応も限定的である。こうした状況は、住宅の老朽化や災害リスクの増加といった環境問題への脆弱性を示唆しており、今後の中古住宅市場の健全化に向けた制度的支援が求められる。
住み替えの実態を見ると、平成31年から令和5年までの間に約2割の世帯が住み替えを経験しており、特にファミリー世帯では「借家→持ち家」への移行が多く見られた。住み替えの理由としては、「自宅を所有するため」「世帯からの独立」「高齢期の住みやすさ」などが挙げられ、世帯構成やライフステージによって動機が異なる。
今後の住み替え意向については、借家に居住する若年単独世帯やファミリー世帯で高い傾向があり、持ち家・借家を問わず「既存住宅への住み替え」意向が増加している。――これは、新築志向から中古住宅への関心が高まっていることを示しており、環境負荷の低減や資源循環の観点からも注目される動向である。