東京大学大学院工学系研究科の野崎京子教授らの研究チームは、二酸化炭素(CO₂)と植物由来のイソプレンから新規ラクトン「COOIL」を合成する手法を開発した。COOILは、CO₂とイソプレン(炭素数5の共役ジエン)をパラジウム触媒で結合させて得られる6員環δ-ラクトンであり、CO₂を24重量%含む完全再生可能資源由来のモノマーである。
従来、CO₂を化学的に固定する手法としては、石油由来のブタジエンを用いたEVP(3-エチリデン-6-ビニルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-オン)の合成が知られていたが、化石資源依存からの脱却には至っていなかった。本研究では、植物が大量に放出するイソプレンを原料とすることで、100%再生可能資源によるCO₂固定を実現した点が新規性として際立つ。
さらに、これまでイソプレンとCO₂からラクトンを得る試みは存在したものの、収率1%、触媒回転数14と極めて低く、実用化には程遠かった。今回の研究では、パラジウム触媒の水分量を精密に制御することで、収率23%、触媒回転数114を達成し、初めてグラムスケールでのCOOIL合成に成功した。反応は70℃、20〜40気圧のCO₂下で進行し、理論計算により還元的脱離が反応選択性を支配することも明らかにされた。得られたCOOILはルイス酸を用いて重合可能であり、ガラス転移点44℃の比較的柔らかいポリマー「ポリ(COOIL)」としてコーティング用途などが期待される。さらに、オレフィン結合やラクトン構造を活かした分子変換も可能であり、EVP系材料との組み合わせによる架橋剤利用も検討されている。
本研究成果は、CO₂の化学固定と再生可能資源の融合による新材料開発の可能性を示すものであり、Nature Communications誌に掲載された。
情報源 |
東京大学大学院工学系研究科 プレスリリース
|
---|---|
機関 | 東京大学大学院工学系研究科 |
分野 |
環境総合 |
キーワード | イソプレン | 再生可能資源 | パラジウム触媒 | カーボンネガティブ | 高分子材料 | 二酸化炭素固定 | ラクトン合成 | ガラス転移点 | 分子変換 | 化石資源脱却 |
関連ニュース |