東京都立大学、大気社、長岡技術科学大学と同大学発スタートアップのパンタレイ、小島プレス工業および九州大学からなる研究グループは、大気中のCO2を大量回収する技術(DAC: Direct Air Capture)の革新に迫る、低エネルギーDACシステム開発プロジェクトを立ち上げた。──ネガティブエミッションの視座から、大気中からCO2を直接吸収・除去するDAC技術の実用化が希求されている。しかし、現在報告されているDAC技術の多くは、送風エネルギーをはじめ、多量のエネルギーを要するものであった。本プロジェクトの目標は、自然風や走行風の利用を可能とするために3つの要素技術を開発し、パッシブDACシステム実用化の阻害要因を解決すること。固定型パッシブDACシステムでは全方向集風技術とアミンが示す液固相分離現象を融合し、送風コストゼロのシステムを実現する。また、移動型パッシブDACシステムではトラックや船舶の走行風を利用して無動力でCO2を回収する技術を確立。さらに、マイクロ波によるCO2脱離回収システムでは、エネルギー効率の高いマイクロ波で固体カルバミン酸からCO2を脱離・回収するシステムを開発する。2029年までに年間1.2トンのCO2を回収し、エネルギー消費を4.5 GJ/tCO2以下に抑えることを目指す。将来的には、回収したCO2を有用な炭化水素に変換する技術と組み合わせ、2050年までに1.5億トンのCO2を回収し、カーボンネガティブな社会を実現することを目指している。