環境省は、「令和7年度西之島総合学術調査」の結果概要を公表した。西之島は小笠原諸島に位置する孤立性の高い海洋島であり、平成25年以降の火山活動により生物相が一度リセットされたことで、原生状態の生態系の一次遷移を観察できる世界的にも稀有な対象とされている。
今回の調査では、3年ぶりに島へ上陸し、陸域・海域・地質の各分野にわたる調査を実施。火山活動による山体の成長は認められず、むしろ浸食の進行が確認された。鳥類については、カツオドリやアオツラカツオドリなどの繁殖が継続して成功していることが確認され、特にカツオドリは北部エリアへの繁殖域拡大が見られた。一方、セグロアジサシは個体数が激減し、繁殖も確認されなかった。
節足動物では、クロアジサシの死体からトビカツオブシムシを複数確認。台地上では4年ぶりにカニの存在が確認され、ハサミムシは初めて北側台地でも生息が確認された。これらの節足動物は、海鳥の死骸を分解することで土壌形成に寄与する可能性があり、生態系の成立過程において重要な役割を担うと考えられる。
植物については、令和2年の大規模噴火後初めて生育が確認され、藻類に加えてコケ植物の定着も観察された。これは群集形成に至るプロセスの解明に資する重要な知見である。また、地質調査では、火砕丘の主火口からの噴気や火口湖の蒸気が継続して確認され、火山活動の現状把握に資する岩石試料の採取も行われた。海域調査では、環境DNA解析のための試料を採取し、海洋生態系の遷移状況の把握を目指している。
さらに、調査期間外でも情報収集が可能となる体制構築に向けて、無人探査機や衛星通信装置の試行設置が行われた。これらの技術は西之島以外の地域にも応用可能であり、自然環境のモニタリングや生物資源の保全に寄与することが期待されている。――同省は本調査結果を、西之島における生態系の遷移過程の評価と今後のモニタリング調査の検討に活用する方針である。
| 情報源 |
環境省 報道発表資料
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|---|---|
| 機関 | 環境省 |
| 分野 |
自然環境 |
| キーワード | 火山活動 | 環境DNA | 節足動物 | 衛星通信 | 無人探査機 | 海洋島生態系 | 一次遷移 | 海鳥繁殖 | 土壌形成 | 自然環境モニタリング |
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