東北大学は、神奈川大学らとの共同研究により、薩南諸島のトカラ列島3島(悪石島・臥蛇島・中之島)および与論島に分布するマンネングサ属植物が同地域に固有の新種であることを明らかにし、「サツナンマンネングサ(学名:Sedum diversiflorum)」と命名した(掲載誌:Nordic Journal of Botany)。
マンネングサ属は形態変異が大きく分類が難しい植物群であり、特にハママンネングサは分類学的再検討の余地があるとされてきた。本研究では、鹿児島大学博物館の標本調査と現地調査を通じて、秋咲き性や花器官の数性の変異、機能的な雌花・雄花の存在など、他種に見られない特徴を確認。核DNAと葉緑体DNAの系統解析により、両親種の特徴を併せ持つ交雑由来の新種であることが明らかとなった。
本種は、秋咲き性や花器官の数性の不安定性など、同属では稀な特徴を有しており、既知種とは明確に区別される。――遺伝子解析の結果、男女群島固有のダンジョマンネングサと宮古島固有のミヤコハママンネングサの交雑に由来し、独自に進化した種であることが示唆された。また、現地調査では、悪石島と与論島で成熟個体数が30未満と推定され、中之島・臥蛇島では標本記録はあるものの現存個体数は不明。IUCNレッドリスト基準に基づき、絶滅危惧II類(VU)に相当すると判断された。
本成果は、日本列島の島嶼域に未記載の分類群が潜在している可能性を示すものであり、今後の系統分類学的再検討と保全活動の重要性を示している。