商船三井、東京大学および琉球大学は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(さきがけ)「革新的な海底生態系3次元構造観測ツールの開発」の成果を公表した。本成果は、海洋温度差発電(OTEC: Ocean Thermal Energy Conversion)に伴う冷排水の環境影響評価に関するもの(掲載誌:The International Journal of Applied Earth Observation and Geoinformation)。
OTECは、海洋深層水の低温性を活用して発電を行う技術であり、冷排水の海洋環境への影響を適切に評価することが社会実装の前提となる。本研究では、海底地形とサンゴ分布の調査を効率化・高精度化するために、東京大学と海洋調査機器の開発を手がけるウインディネットワークが共同開発した曳航式調査装置「Speedy Sea Scanner」と、AIによる画像解析モデル「Coral-Lab」を組み合わせた新たな海底観測手法の有効性を実証している。Speedy Sea Scannerは、水中一眼レフカメラ6台を搭載した曳航式マッピングシステムであり、小型船による曳航で広範囲の海底画像を短時間で取得することができる。また、Coral-Labは、世界各地のサンゴ画像と調査海域の過去・現在の画像を学習させたセグメンテーションモデルであり、サンゴの分布と被度を自動推定できる。従来はダイバーによる目視調査が主流であったが、それらの技術を融合することで、広域・高効率・短時間での海底環境調査が可能となり、冷排水の拡散シミュレーションや放水箇所のモニタリング手法の確立への貢献が期待される。