オーストラリア海洋科学研究所(AIMS)、サンシャインコースト大学、沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究グループは、オニヒトデ(Acanthaster;CoTS)のコミュニケーションに関する新知見を発表した。オニヒトデはインド・太平洋地域のサンゴ礁に生息する在来種であり、通常は生態系の健全性維持に寄与するが、大発生時にはサンゴ礁を広範囲に破壊することで、気候変動への適応力を損なう要因となる。
従来の駆除方法は手作業による個体除去が主流であり、効率性やコスト面で課題があった。今回の研究では、オニヒトデが繁殖期以外でもペプチドの匂いを感知し、群れとして行動する能力を持つことが明らかになった。研究チームはこの知見を基に、毒性がなく低濃度でも効果を発揮する合成ペプチド「Acanthaster attractins」を開発した。──実験では、ブラインシュリンプを用いた毒性試験により安全性が確認され、流路試験ではオニヒトデがペプチド源に向かって誘導される行動が観察された。これにより、オニヒトデを特定の場所に集めて効率的に駆除する新たな手法の可能性が示された。
OISTマリンゲノミックスユニットの佐藤矩行教授は、「オニヒトデのとげは防御だけでなく、ペプチドの感知・分泌にも関与しており、フェロモンのような働きをする物質が群れ行動を促進する」と説明。今後は、これらの物質を活用した安全かつ効率的な有害生物制御技術の開発が期待される(掲載誌:iScience)。