青森県は10月6日、再生可能エネルギー共生税(以下「再エネ共生税」)の導入について総務大臣の同意を得たと発表した。これは、地域との合意形成がないまま設置された大規模な太陽光・風力発電設備に対し、課税を通じて適地誘導を図る制度である。同税は、地元との共生を促すことを主な目的としており、課税対象は風力500kW以上、太陽光2,000kW以上の設備で、税率は最大で風力1,990円/kW、太陽光410円/kWとされている。一方、地元の理解を得た「共生区域」に設置された設備は非課税となる(2026年内施行予定)。
青森県の再エネ共生税は、2023年11月に総務大臣の同意を得た宮城県の「再生可能エネルギー地域共生促進税」に次ぐものとなる。宮城県では、森林開発を伴う再エネ設備に対して課税を行い、地域との合意形成を促す仕組みを導入している。課税対象は太陽光・風力・バイオマス発電設備で、森林開発区域が0.5haを超える場合に適用される。税率は太陽光620円/kW、風力2,470円/kW、バイオマス1,050円/kWであり、地域脱炭素化促進事業など、地域と協調した設備は非課税とされる。
両県とも、税収確保が目的とせず、地域との共生を重視した制度設計を採っており、どちらも地方税法第4条第3項に基づく「法定外普通税」としていて導入されている。
一方、「法定外目的税」の整備を模索している自治体も見られる。岡山県美作市では、事業用発電パネル税の導入を目指している。税収の使途を防災や環境保全に限定する構想を打ち出している。同市では、太陽光発電設備の急増に伴う景観破壊や住民との摩擦が問題となっており、条例案の策定と総務省との協議が進められているが、現時点では総務大臣の同意には至っていない。目的税としての導入には、税収の使途を明確に定める必要があり、制度設計の難易度が高いことも一因と見られる。
再生可能エネルギーの導入が加速する中で、地域との軋轢を回避し、持続可能な開発を実現するためには、こうした共生型課税制度の整備が重要となる。青森県と宮城県の事例は、自治体が主体的にゾーニングと税制度を組み合わせることで、地域合意形成と開発抑制を両立させる新たなモデルを提示している。今後、美作市を含む他自治体の動向や、制度の実効性、事業者との調整状況などを注視する必要がある。――再エネ共生税等は、地域合意なき開発に歯止めをかける仕組みとして、環境アセスメントの限界を補完し、環境デューデリジェンスの理解促進に資する制度的枠組みとなる可能性がある。