東京大学大学院医学系研究科のPhung Vera Ling Hui助教は、北海道大学、京都大学、鹿児島大学、インドネシア・パランカラヤ大学との共同研究により、森林・泥炭地火災から発生する煙霧が呼吸器疾患に与える影響を明らかにした(掲載誌:International Journal of Epidemiology)。
本研究では、インドネシア中央カリマンタン州のPalangka RayaおよびPulang Pisauに所在する地域保健センター(Puskesmas)の受診データと、衛星画像による火災情報を用いて疫学的解析を行った。煙霧の定義は、PM10濃度が100 μg/m³を超える日を「煙霧日」、火災ホットスポットが確認された場合を「火災煙霧日」、確認されない場合を「非火災煙霧日」とし、継続期間も考慮した。その結果、火災ホットスポットに近いPulang Pisauでは、火災煙霧日における呼吸器疾患の受診リスクが有意に上昇し、煙霧の継続期間が長いほどリスクも高まる傾向が確認された。一方、火災源から離れたPalangka Rayaでは有意な影響は認められなかった。
本研究では、煙霧の発生源や特性によって健康への影響が異なることが確認された。特に、泥炭地火災では地下で燃焼が続くため、炎が見えにくいにもかかわらず、大気汚染物質を含む煙が多く発生することが知られており、火災の近隣地域では呼吸器疾患の受診リスクが高まる傾向が見られた。
本研究は、環境再生保全機構の環境研究総合推進費、JSPS科研費、CIFOR(国際林業研究センター)プロジェクト、国立環境研究所の気候変動適応研究プログラムの支援を受けて実施された。
情報源 |
UTokyo FOCUS
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機関 | 東京大学 |
分野 |
健康・化学物質 大気環境 |
キーワード | 森林火災 | PM10 | 呼吸器疾患 | 環境研究総合推進費 | 衛星画像 | 泥炭地 | 煙霧 | 気候変動適応 | 火災ホットスポット | 疫学評価 |
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