名古屋大学、東京大学およびアルフレッド・ウェゲナー極地海洋研究所など4大学・機関からなる研究グループは、森林火災が黒色炭素エアロゾル(BC)の重要な発生源であることを実証した。BCは温暖化加速の一因と見られており、発生源は化石燃料の燃焼過程(人為起源)とバイオマス燃焼に大別される。北極域に到達したBCは大気を加熱し、気温上昇や雪氷融解を促進すると考えられているが、航空機観測データは不足しており、観測事例相互の比較・解析は進んでいなかった。同研究グループは、BCの発生源別寄与度を分析し、気候影響の推定における不確実性を低減するために、航空機を用いた国際共同観測プロジェクト「PAMARCMiP」において取得したデータを用いて、とりわけ大気加熱効果が大きくなる「春季」のBC質量濃度分布(高度: 0-5,000 m)を精査するとともに、過去の観測データや数値モデルを用いてBC鉛直積算量の内訳を解析した。その結果、北極の大気中に存在するBC濃度の年々変動が、中緯度の「森林火災」発生規模の年々変動に強く支配されていることが明らかになった。また、実観測データとシミュレーション結果の比較検証を通じて、従来の数値モデルは森林火災由来のBCの気候影響を過小評価していることが示唆された。これらの知見は従来モデルの検証や改良に資するものであり、より正確な北極温暖化の予測に結びつくことが期待されるという。