総合地球環境学研究所と京都気候変動適応センターは、京都市における熱中症搬送者数の変動要因を分析し、その成果を日本気象学会の機関誌『天気』(2025年4月号)で発表した。本研究は、2011年から2023年の13年間にわたる5~9月のデータを対象に、気象条件と観光客数の変動が熱中症搬送者数に与える影響を定量的に解析したもの。梅雨明け直後の7月中旬に焦点を合わせ、地域特性の観点から熱中症リスクの要因を分析した。京都では伝統行事・祇園祭の山鉾巡行が毎年7月17日に行われ、延べ50万~80万人の観光客が訪れる。今回の研究では、梅雨明けが祇園祭の直前にあたる年ほど、熱中症搬送者数が急増する傾向が顕著であることが明らかになった。梅雨明け直後の急激な気温上昇に対して、人々の暑熱順化が不十分な状態であることが背景と考えられた。また、日平均気温が28℃を超えると搬送者数は5人/日以上、30℃で10人/日以上、31℃では20人/日以上と急増し、地下鉄乗降データを用いたAI分析により、観光客の流入が熱中症リスクを高めていることも定量的に示された。
これらの知見は、気候変動による「ハザード」だけでなく、暑熱順化の遅れという「脆弱性」、そして観光による「曝露」が重なったときにリスクが最大化することを示している。今後の適応策として、梅雨明け直後の暑熱順化支援や、祇園祭期の観光客への熱中症対策の強化が求められる。
情報源 |
総合地球環境学研究所 プレスリリース
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機関 | 総合地球環境学研究所 京都気候変動適応センター |
分野 |
健康・化学物質 |
キーワード | 気温上昇 | 気候リスク | 気候変動適応 | 熱中症搬送者数 | 暑熱順化 | 祇園祭 | 梅雨明け | 観光客数 | 機械学習分析 | 地下鉄乗降データ |
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