東北大学大学院生命科学研究科の近藤倫生教授が率いる「ネイチャーポジティブ発展社会実現拠点」(NP拠点)は、参画企業であるアミタホールディングスと共同で、地域に特化した実践ガイド「地域のネイチャーポジティブ活動の手引き Ver.1.0」を公開した。本手引きは、自然の保全・回復と地域の価値創造を同時に目指す個人や組織を対象に、ランドスケープアプローチを軸とした進め方を提示している。
企業や自治体がネイチャーポジティブの重要性を認識し始める一方で、科学的根拠に基づく活動や関係者の参画が難しいという課題がある。本手引きは、自然と産業・暮らしを一体として捉え、地域のステークホルダーが「望ましい自然のあり方」を共有し、行動へつなげる共通基盤を提供することを目的としている。具体的には、課題把握→計画→実行→改善の4ステップによるスパイラルアップ型の進め方を採用し、ミティゲーション・ヒエラルキー(回避→軽減→再生→変革)の優先順位を明示。さらに、TNFDやISO 17298など国際基準との対応表を掲載し、国際的な整合性を確保しているとう。
今後は、富山県黒部川流域など複数地域でのモデル事業に活用し、利用者からのフィードバックを反映したアップデートを予定している。近藤教授は「科学が情報提供に留まらず、対話と行動を後押しする力になるべき時代だ」と述べている。