日本自然保護協会(NACS-J)は、2024年度に「ネイチャーポジティブ貢献証書」を発行した6社の取り組みを紹介した。うち4社は市町村と連名で発行されており、地域との連携を公的に証明する形式となっている。証書は、企業の生物多様性保全活動が地域目標や世界目標(昆明・モントリオール生物多様性枠組)にどの程度貢献しているかを、科学的手法に基づいて定量的に評価した結果に基づいて発行された。
NACS-Jが採用した評価手法は、地域全体を見据えた「ランドスケープアプローチ」を基盤とし、専門家の協力のもと、自然の状態(State of Nature)を多面的に評価するものである。具体的には、①統計学的手法による生物の分布予測、②Hanski連結性指数による生態系ネットワーク機能の評価、③STAR指標による絶滅リスク低減への寄与度の算出、④J-ADRESを用いた地下水涵養量・炭素吸収量の推定、⑤NbS世界標準(IUCN)への適合度評価の5点が主要な定量評価項目として活用された。これらは、国際的に議論されているTNFD(自然関連財務情報開示)にも準拠しており、企業の自然関連リスク・機会の開示に資する情報基盤となる。
今回証書を受けた企業は、NTTドコモ(所沢市)、ゴールドウイン(小矢部市)、JESCOホールディングス(那智勝浦町)、日清製粉グループ本社(只見町)、日本生命(甲賀市)、三菱地所(みなかみ町)の6社である。各社は、自然再生、外来種駆除、絶滅危惧種の保全、地域計画作りなど多様な取組を展開しており、特に自治体との連携による証書発行は、企業の社会的責任と地域貢献を可視化する新たな枠組みとして注目される。
NACS-Jは今後も、企業と自治体の協働によるネイチャーポジティブの推進を支援し、毎年の証書発行を継続する方針である。本制度は、科学的知見に基づく定量評価を通じて、企業の自然関連情報開示の質を高めるとともに、地域主導の生物多様性保全の実効性を高める仕組みとして機能するという。