立命館大学・OIC総合研究機構と総合研究大学院大学・統合進化科学研究センターの共同研究チームは、都市部に生息するエゾリスのメスが郊外の個体よりも繁殖状態が良好であることを北海道帯広市での調査により明らかにした。本研究は、人による餌やり行為(餌付け)が野生動物の繁殖に与える影響を科学的に示したものである(掲載誌:Mammalian Biology)。
都市化の進展により野生動物の生息環境は変化し、都市が新たな生息地として機能し始めている。餌付けは都市での生存を助ける保全活動とされてきたが、哺乳類に対する影響は十分に検証されていなかった。本研究では、帯広市の都市部で日常的に餌付けされるエゾリスと、郊外で人の介入がほとんどない個体群を比較し、繁殖状態の差異を調べた。調査は繁殖期の3月から7月にかけて実施され、妊娠率、出産年齢、出産回数などを記録した。
調査結果を分析したところ、都市のリスは郊外よりも妊娠率が高く、出産年齢の幅が広いことが判明した。都市では1歳から5歳まで出産が確認されたのに対し、郊外では2歳から4歳に限られた。また、都市のリスは出産時期が約1か月早く、年に2回出産する例も見られた。巣立ち数は都市で平均3匹、郊外で平均1.5匹と大きな差があり、生涯に残す子の数が都市で多い可能性が示唆された。
研究チームは、本成果は「餌付けが都市のリスの繁殖状態を向上させ、都市適応を促進する一方で、人の活動が野生動物の生態を容易に変えることを示す」ものと述べている。
| 情報源 |
立命館大学 プレスリリース
総合研究大学院大学 プレスリリース |
|---|---|
| 機関 | 立命館大学 総合研究大学院大学 |
| 分野 |
自然環境 |
| キーワード | 生物多様性 | 保全活動 | 都市化 | 餌付け | 野生動物管理 | 都市生態系 | エゾリス | 繁殖率 | 北海道帯広市 |
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