鹿児島大学大学院理工学研究科の山崎氏と、同大学自然環境研究センターの森脇主任研究員は、東京農業大学の研究者らと共に、沖縄県石垣島の二次草地において網羅的な植物相調査を実施し、「ナントウウリクサ」(Torenia benthamiana Hance, アゼナ科ハナウリクサ属)を確認した。本種はこれまで台湾、中国南部、ベトナム、ラオスに分布が知られていたが、日本での記録は初めてである(掲載誌:Acta Phytotaxonomica et Geobotanica)。
石垣島の草地は開発や離農により急速に減少しており、放牧地や水田畦畔などの二次草地が生物多様性保全上重要な役割を果たしている。今回の調査では、茎・葉・萼に密生する毛などの形態的特徴により、既知のハナウリクサ属3種(ウリクサ、ツルウリクサ、ゲンジバナ)と異なる日本新産の種であることが確認された。採集した証拠標本は鹿児島大学総合研究博物館に収蔵された。また、発見地が台湾の既知分布域に近く、生育環境も類似していることから、本種が在来植物である可能性が示唆されたと報告している。
研究グループは、石垣島の二次草地が生物多様性保全に不可欠であると指摘し、放牧地の管理放棄や土地整備による草地消失が希少種の存続に深刻な影響を与えると警告している。