京都大学生態学研究センターの山尾教授、弘前大学農学生命科学部の木村氏(研究当時)、名城大学農学部の大崎助教、鹿児島大学の金子氏(研究当時)らの共同研究チームは、イネ科植物におけるアリ散布共生の有無を検証するため、一年生草本のエノコログサ(Setaria viridis)とアキノエノコログサ(S. faberi)を対象に調査を行い、種子に脂肪分を含む器官「エライオソーム」が存在することを発見した(掲載誌:Plant Species Biology)。
植物と動物の共生関係は被子植物の進化に深く関与してきたとされ、その代表例がアリ散布(Myrmecochory)である。アリ散布では、種子に付属するエライオソームがアリを誘引し、アリは種子を巣へ運搬する。これにより植物は競争や捕食を回避できる。本研究では、遺伝的背景が明確なモデル植物を用いることで、共生の進化的意義を解明する狙いがあった。
野外調査では、青森県弘前市と滋賀県大津市の草地でエノコログサの種子がトビイロシワアリ(Tetramorium tsushimae)により高頻度で運ばれることを確認した。回収率は最大90%、平均運搬距離は約38cmであった。一方、アキノエノコログサでは回収率が10~25%、距離は約14cmにとどまった。室内実験でも同様の傾向が示され、エノコログサの果皮がアリにとって価値の高い餌資源であることが示唆された。果皮を除去すると回収率は80%から20%に低下し、脂質の存在が散布成立に重要であることが明らかになった。
研究チームは、エノコログサが沿岸域や都市環境への定着においてアリ散布共生が寄与してきた可能性を指摘している。また、ゲノム情報と変異体が整備されたモデル植物で共生関係が確認されたことで、「植物と動物の種子散布共生を遺伝子レベルで解明する新たな研究の切り口が開かれた」と訴求している。