東邦大学・新江ノ島水族館・黒潮生物研究所らの研究グループは、日本沿岸域で刺胞動物のクラゲ類に寄生する吸虫の幼虫ステージであるメタセルカリアを網羅的に調査し、クラゲ類から9種を同定、魚類への感染経路を推定した(掲載誌:Journal of Helminthology)。研究共同体制には水産研究・教育機構、京都府立海洋高等学校などが参画し、カツオノエボシなどを含む複数種のクラゲを対象として寄生虫学的な証拠を積み上げた。
既往研究では、クラゲ類はニューストン(水表生物)やプランクトン(浮遊生物)として海洋を漂い、捕食者は限定的と見なされがちだった。しかし近年、魚類胃内容物のDNA解析や摂餌実験を通じて、魚類が従来認識よりも多くのクラゲを摂食していることが分かってきた。そこで、本研究では、吸虫(trematodes)は複数宿主を乗り換える生活史を持ち、幼虫の一段階であるメタセルカリア(metacercariae)が第二中間宿主や待機宿主を介して終宿主に到達するという理論が、海洋食物網の把握に有効であると考え、形態学とDNAバーコーディング(DNA barcoding)を併用し、核28S rDNA(28S ribosomal DNA)とミトコンドリアCOI(cytochrome c oxidase subunit I)の配列で成虫標本と照合した。
その結果、クラゲ類8種245個体のうち、ギンカクラゲを除く7種からメタセルカリア325虫体を検出し、計9種に分類できることが明らかなった。分子照合により9種のうち6種の終宿主となった海産魚12種が判明した。また、残る3種も魚類寄生群に属することが示唆された。さらに、シイラとマサバでは同種吸虫が各4種見つかり、クラゲを高頻度に摂餌する可能性が高いことが確認された。一方、クラゲ摂餌記録が乏しいコバンザメやトビウオ科の一種では、小型動物プランクトン(例:ヤムシ類)経由の待機宿主感染が想定された。また、吸虫の一群であるProdistomum Type 4(カツオノエボシやアカクラゲに寄生するグループ)では、第一中間宿主がメダカラ(タカラガイ類)であることが判明しており、そこから遊泳性幼虫セルカリアがクラゲへ感染する経路が例示されている。
研究グループは、「カツオノエボシに多様なメタセルカリア(例:クラゲビードロ吸虫 Tetrochetus coryphaenae)が見られた点などから、クラゲ類が海産魚の主要餌料として機能し得ることを寄生虫学的証拠で補強した」と述べている。また「今後、未調査のクラゲ類や第一中間宿主の解明が進めば、魚類への栄養連結の理解が一層深まる」とコメントしている。
| 情報源 |
東邦大学 プレスリリース
黒潮生物研究所 NEWS |
|---|---|
| 機関 | 東邦大学 (公財)黒潮生物研究所 |
| 分野 |
自然環境 |
| キーワード | クラゲ | 食物網 | 刺胞動物 | DNAバーコーディング | 吸虫 | メタセルカリア | 28S rDNA | COI | 終宿主 | 待機宿主 |
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